
最初に彼女をみた時は、死んだ子を抱えているのかと思った。
モロッコは砂漠の気候だ。昼は暑いが夜になると急激に気温が下がる。
マラケシュの「タンネリ」という革の加工場のそばの路地で出会った物乞いの母子。
イスラームは一夫多妻を認めている。
若くして何人目かの夫人になった女性が、結婚してほどなく夫に先立たれてしまうと、このように乳飲み子を抱え路頭に迷う。
彼女らはたいていモスクの入口などで物乞いをしながら子供に乳を与えている。
しかし、イスラームには「喜捨」の精神というものがあり、持てる者が持てない者に施しをするのは当然とされている。
それで彼女たちも生きていける。
幸いなことに、子供は眠っているだけだった。
寒空の下、ただひたすら彼女は子供を抱きしめてうなだれていた。
『ああ、聖母がここにいる』とその時僕は思った。
- 2007/06/16(土) 00:43:27|
- モロッコ
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